【SFジャーナル】52年ノーベル平和賞受賞者の「核実験中止のメッセージ」

今週はノーベルウィークで、日本人の受賞が相次ぐなか、10日はいよいよ平和賞の発表です。ちょうど昨年、日本被団協が受賞して「核廃絶」のメッセージが世界に伝わり、世界の中の人たちと思いを共有しましたが、半世紀以上前に「核実験の中止」を訴えた人がいました。52年にノーベル平和賞を授賞したアルベルト・シュヴァイツァー(1875ー1965)です。

シュヴァイツァーは医師としてアフリカの貧しい地域に病院と診療所の建設に尽力をつくしたことで1952年に平和賞を受賞しました。そして、すべての生命を尊重する「生命への畏敬」という哲学を唱えるなかで、核兵器の保有、核実験に対して反対の声をあげるようなり、57年にラジオ番組を通して核実験の中止を訴えました。

「(放射線降下物について)収集された物質をかんがみると、まだ全容を導き出すには至っていないが、核爆発から生じる放射性物質がすでに人類に軽視すべからざる危険をもたらしており、さらなる核爆発はこの危険をただならぬ程度にまで高めるという結論を導き出すことができる(57年反核の「良心の宣言)』(『サイレント・フォールアウト』p88より)

そして今、伊東監督が次回作のために解析中の3000pの米議会公聴会の記録には、その記述が詳しく掲載されていました。

「アメリカ国内で核実験が続く中、アフリカから戻ったアルベルト・シュヴァイツァーが、1957年4月23日に発表した声明の中にこのような記述があります。

『原子爆弾の爆発によって生じた空気中の放射能は、どれほど些細なものであっても、長期的には体内に蓄積される放射能量を増大させることで、いずれ危険となる可能性がある…

 この放射性物質の蓄積が意味するところは、北米のコロンビア川で放射能が分析された際の観測結果によって明確に示されている。この放射能は、産業用原子エネルギーを生産し、廃水を川に排出するハンフォードの原子力施設によって引き起こされたものである。 河川水の放射能はごくわずかであった。しかし河川プランクトンの放射能は2000倍、それを食べるカモの放射能は4万倍、魚の放射能は15万倍に高まっていた。親鳥が川で捕った昆虫を餌として与えられた幼いツバメでは放射能が50万倍、水鳥の卵黄では100万倍以上に達した……。

原爆爆発による放射性元素のさらなる生成が既存の危険を増大させることは、人類にとっての災厄であり、いかなる状況下でも阻止されねばならない災厄であると認識せざるを得ない。子孫に及ぼす結果の責任を負えないという理由だけでも、他に選択肢はありえない。彼らは最大かつ最も恐ろしい危険に脅かされている」

public domain
ソース The Library od Congress Prints & Photographs Online Catalog
著者 Arthur William Heintzelman (1891–1965)

中国新聞ヒロシマ平和メディアセンターの「ヒロシマの記録1961 10月」にシュバイツァーの活動の記録が掲載されていました。

それによりますと、1961年10月9日にアルベルト・シュバイツァー、フィリップ・ノエルベーカー氏らノーベル平和賞受賞者7人が世界の指導者に平和を訴える声明を出したそうです。なんとその2日後の11日には、ケネディ米大統領が記者会見で「米は大気圏内核実験の再開を目下検討中である」と語った。翌年にはケネディ米大統領へ直々に手紙を書き「子どもたちへの遺伝的な影響に関心をもってほしい」と、訴えたそうです。

セントルイスの女性たち、科学者、市民、ノーベル平和賞受賞者いろんな人たちの平和運動がうねりとなって、63年7月の大気圏内核実験中止に至ったのです。

いろんなエピソードが満載!

この記事を書いた人

村田くみ