2025秋・EU上映ツアー in フランス編②

昨日に続き、EU上映ツアー・フランス編、杉田くるみさんのレポート(facebookからの転載)です。

25年10月13日サンポール・トロワ・シャトー(南仏)シネマ第七芸術

遅れているサイレントフォールアウトのフランスでの上映レポートの続きです。

10月13日月曜日、サン・ポール・トロワ・シャトーという小さな町の映画館での上映会。ここは、原発立地の町です。上映会場の映画館からトリカスタン原発まで直線で3kmちょっと。めちゃくちゃ近いです。

原発のある町は原子力推進の人たちがほとんどで反核反原発の人たちはとても少なく、こういうイベントは動員が大変です。

会場の小さい映画館で、オーナーと話しをしたのですが、若い人たちの映画離れが酷く、特に今年は入場者が壊滅的に少なく、恐らく今年で閉館するだろうというお話でした。これは全国的な傾向だとのことです。

イベントは、アペリティフで開始。主催団体の皆さんの手作りパイなど、どれもとても美味しい。そして、こういう場合必ずベジタリアン対応のディッシュがあるのが嬉しいです。

主催団体は、この地方のFoE。動員数は20人ほど。

上映後のディスカッションに登壇したのは私と、市民測定研究所クリラッドのデボルドさん、この近辺のストップ原子力のマルヴォーさんです。

質問で印象に残っているのは、授乳が母乳と牛乳の場合とで、どちらがストロンチウムの量が多いのかという質問で、ええと、それメインテーマなんですけど、伝わらなかったのか、とややビックリしました。恐らく生物濃縮のことがわからないのだと考えて、放射能による環境汚染と食物連鎖の説明を加えました。

後は、乳歯検査分析が破壊検査だということがいまひとつ伝わりにくかったかもしれません。映画の中には封筒から出てくる乳歯映像もあったので、それが未分析のものだという事は、どうもわかっていなかったようです。

原爆投下以降、また核実験後やチェルノブイリ事故後の疫学調査の有無や、その質についても議論が展開されました。日本についてはABCCやLSSのことを伝えました。もちろん、それが治療の為ではなく、兵器としての原爆の研究のためのデーター収集が目的であったこともふくめて。

フランスでは、『核実験』というと、実験室でやっているような、クリーンな印象を与えてしまうので、『核爆発』と言い換えようという発言が強いのですが、原爆も核実験も、現地にいた人たちをモルモットとして扱っていると言う意味から『実験』という言葉は、必ずしも外すべきではないと私は考えています。

また、日本は広島長崎に原爆を落とされたのに、どうして原発を受け入れたのかと言う質問や(これはよくある)、ヨーロッパは現在核兵器の使用の可能性が検討にあがっているが、原爆を経験した日本では核兵器の使用について現在どのような世論があるのかと言う質問が出ました。前者に関しては、アメリカが日本への原発導入のために多大なエネルギーと資金を投入したこと、『原子力平和利用博覧会』のこと、広島に原発を建設すると言う案がアメリカで検討されていたことなどを伝えました。後者に関しては最後の核実験(2017)を行った北朝鮮を含めたアジアの政治地理的状況、日本の非核三原則が危うくなりそうなことを話しました。

11月28日には、この近くでもう一度上映会があります。同じくトリカスタン原発近くのモンテリマールと言う街で、動員は難しそうですが、このようなところでこそ上映を積み重ねていく意味があると思います。

25年10月18日サン・ジュニアン フーテ・ヌー・ラ・ペ

サイレント・フォールアウトのフランス上映ツアーのご報告、遅れていますが、10月18日にフランス中部リモージュ近辺の町、サン・ジュニアン・であったフーテ・ヌー・ラ・ぺ、(日本語で言うと「ほっといてくれよ!」と言うくらいの感じでしょうか)というフェスティバルの6回目で今回のテーマは「日本」。10日間続いたフェスティバルの一環として上映してもらいました。

動員は30人くらい。登壇者は兵器監視市民グループのパトリス・ブーブレさん、マリ出身でパリ在住のジャーナリストのティアンベル・グアンバヤラさんと私でした。

新しい質問としては、これだけの乳歯が集まったのだから、疫学調査はできなかったのかという質問でした。うーん、乳歯収集はストロンチウム90の吸収量をマーカーみたいに利用しているのが恐らく実態で、疫学調査をするためには乳歯提供者のその後の生活状態や健康上の綿密な追跡情報が必要なので、疫学調査を目的には設計されていないし、転用は無理と回答しておきました。

それ以外にはもちろんフランスの核実験や日本の原爆被爆者、福島事故の被害者に関する質問が出て、会場にはポリネシアの核実験被害者アラキノさんもいらしたのでポリネシアの被害者に関しては彼が会場から発言してくれました。政治的理由でアフリカからの証言は出にくいのですが、ティアンベル・グアンバヤラさんが核実験の問題はアルジェリアだけの問題ではないこと。フォールアウトに国境は関係なく、汚染は他国にも及んでいると考えるのが妥当なこと、しかしこと核の被害に関しては、アフリカは沈黙の大陸になっていることを話してくれました。

この上映会も含めて全体には『このような事実も、乳歯調査も知らなかった。感動した』、という好意的反応が多く、来年上映したいのだが、と言う問い合わせも数件いただいています。

ところで、リモージュといえば、ウラン鉱山。

1946年から2001年の間に、フランス本土では200以上のウラン鉱山が操業されました。これらの活動により、特に鉱滓(約2億トン)やウラン抽出残渣(5,000万トン以上)など、大量の放射性廃棄物が発生しまし、それによる環境汚染は今も続いています。

リモージュの北部にもウラン鉱山があり、この地方はフランスのウラニウムの1/3を生産していました。

放射能汚染は、何層にもわたりフランスでは他人事ではないのです。

この記事を書いた人

村田くみ