2025秋・EU上映ツアー in ドイツ編④

2025年9月下旬から11月上旬にかけて、フランス、ドイツ、フランスと上映会が行われました。
前回に引き続き、梶川ゆうさんからのレポートです!

25年10月7日ベルリン、ベルリン国際ウラン映画祭オープニング、ツァイスプラネタリウム内映画館、10月9日ベルリン、ベルリン国際ウラン映画祭第3日目夜のプログラム、ACUD映画館での上映会

主催:Sayonara Nukes Berlin、ICAN ドイツ、IPPNWドイツ支部、ICBUW、IALANA、平和の鐘協会、ベルリン国際ウラン映画祭

ベルリン国際ウラン映画祭は今年10回目を迎えることもあり、オープニングは招待者を含め会場には80人以上が集まった。オープニングの映画としてサイレントフォールアウトが上映されたわけだが、7日から11日までベルリン各地の映画館で上映される映画は短編も含めて合計22本である。

もともとブラジルのリオデジャネイロで始まった国際ウラン映画祭だが、すでに伊東監督のこのサイレントフォールアウトはリオデジャネイロでも上映されて受賞しており、ヒロシマ・ナガサキ原爆投下から80年を記念した今年、ICAN、IPPNW、ICBUW、平和の鐘協会との共同企画としてサイレントフォールアウトのドイツ語字幕版を提供したことを感謝された。

上映後、伊東監督に代わって私がこの映画のメッセージについて話をして、Q&Aがあった。活発にたくさんの質問が出たが、中には「どうやってAlec Baldwinのような有名な俳優にナレーションを依頼できたのか」とか、「伊東監督は第4作目を製作するためのクラウドファンディングをしたということだが、しっかり目標の資金は集まったのか」という質問もあった。ことに、女性・母親たちが子どもたちを守りたい一心であれだけの乳歯プロジェクトを繰り広げ、政治家も動かしたことに対して参加者は皆拍手を送っていたが、同時にこのプロジェクトの参加者が「コミュニスト」と呼ばれたというところでは、「歴史は繰り返す。今も同じ」と語る人も多かった。

9日のACUD映画館での2度目の上映会にはオープニングほどの観客は集まらなかったが、その代わりにICANドイツの理事の一人であるヤニーナ・リューター氏、ICBUWの代表であるマンフレッド・モアー氏、そして私が、国際ピースビューローのルーカス・ヴィルル氏の司会でパネルディスカッションをした。

ここでのディスカッションでは特に、この映画の中でケネディ大統領が発表する部分的核実験禁止条約(PTBT)と、包括的核実験禁止条約(CTBT)、それから2021年に発効した核兵器禁止条約について触れた。部分的核実験禁止条約は、正式名を日本語で「大気圏内、宇宙空間および水中における核兵器実験を禁止する条約」と言い、映画の中でケネディが語るように、1963年にモスクワで正式調印され(アメリカ合衆国、イギリス、ソ連)、それから108か国が調印して、発効した。しかし中国、フランスを含む十数か国が調印しなかったこと、それから地下での核実験が除外されていた(のちにアメリカとソ連間で地下核実験制限条約が著名され、地下核実験での最大角出力を150ktに制限することが決められたが、1990年まで批准されなかった)。

それで1996年にようやく包括的核実験禁止条約(地下核実験も禁止対象)が国連総会で採択され、186か国が署名し、178か国が批准したが、発効要件国とここで設定されている核兵器保有国を含む44か国が批准していないため、未発効である。

ICBUW代表で国際法専門家であるモアー氏は、ここで興味深い話をした。2021年に核兵器禁止条約(TPNW)が発効したが、これは、発効要件が厳しかったために包括的核実験禁止条約がいまだに発効できないでいることからの教訓を得て、発効に必要なのは50か国の批准と設定したため(核兵器保有国を含むとしない)、それで発効が実現できた、ということだった。この核兵器禁止条約の国連総会での採択や条約の推進にはIPPNW(核戦争防止国際医師会議)とそこから独立して結成されたICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)が大きく貢献しており、それで2017年のノーベル平和賞を受賞しているのだが、残念ながらここには核兵器保有国だけでなく、いわゆる「核の傘下」を謳っているドイツ・日本を含め、ほとんどのNATO加盟国も署名していない。それでも、この締約国会議では、例えば実際に核実験で汚染され、被害者援助や環境修復に関する国際信託基金を作ることや、環境修復するための科学顧問グループなどを作るなどの検討会議が開かれている。そこに去年まではドイツもオブザーバーとして参加していたのだが、ウクライナ戦争などから地政学的状況が変わった、ということを理由に今年3月の会議にドイツはオブザーバーを送ることをやめてしまった。そのことに対する批判もこのディスカッションでは出された。ちなみに日本はヒロシマ・ナガサキ原爆投下を体験した国でありながら、オブザーバーにすらなったことがない。

それでも、このサイレントフォールアウトの中で描かれている、子どもたちを守るために乳歯を集めて検査し、政治を動かした女性たちのように、政治家、専門家のいいなりになることなく、自分や自分の愛する人たちの健康、生活環境を守るために情報を集め、自分が納得できない場合にはとことん調査し、データ収集してそれを同じ懸念を持つ仲間同士で共有し合い、話し合って、抵抗しなければいけないところではしっかり抵抗する、声を上げる、改善を求める、そういう市民運動がいかにこれからも欠かせないか、結局は自分の生を自分で守っていくために市民が力を合わせていくことが大切だ、という、連帯や市民運動の重要性を確認して、ディスカッションを終えた。 デュッセルドルフに住む日本の方が二人来ていて、ぜひデュッセルドルフでもサイレントフォールアウトを上映したいので、仲間と相談してみる、ということだった。

この記事を書いた人

村田くみ