監督の読み解きと撮影エピソード 9

翌日は、核実験場に更に近づくため、ネバダ核実験場ゲート前を訪ねた。実験場への道には、軍事基地が何キロにもわたって存在する。

途中、車を止めて撮影する。

そこで実感したのは「風」だ。

常に強い風が吹いている。

カラカラに乾燥した風が、ヒューヒューと音を立てて吹きすさぶ。

西部劇の決闘シーンで聞こえる風の音、まさにあれだ。

地上付近でこの風であれば、上空の風がいかに強烈か想像できる。

その風が放射性物質をニューヨークにまで運んだのだ。

広大な砂漠に、ポツンとゲートが存在する。

僕らは撮影を始める。

このゲートのすぐ奥で、100回の大気圏内核実験と、828回の地下核実験が行われた。

ゲートには、幅の広い白線が引いてあり、無断で白線を越えると射殺される可能性もあるという。

緊張感が漂う。

レポートしていると、突然、どこからか3台のパトカーが現れた。

車から降りてきたセキュリティは、銃を身につけ重装備だ。

一瞬、厳しい職務質問を受けることになるのかとか、撮影メディアを没収されるのではないか、と身構えた。

彼は「ここで何をやっている?」「一度、向こうの広場に、移動しろ」と言う。

ジムが、取材のことを説明してくれた。

事なきを得たが、緊迫した瞬間だった。

核関連の資料には、「トップシークレット」という印が押されていることが多いが、まさしく核兵器開発は、そのすべてが厳しい管理下にあるのだ。

爆心地付近でそのことを実感した。

さて、物語は、被害が爆心地周辺だけではなかったことを伝えなければならない。

第2章は、爆心地からアメリカ大陸全域に及ぶ放射能汚染の広がり、その事実を伝えるパートだ。

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