監督の読み解きと撮影エピソード 22

そのことがきっかけで、全米の放射能汚染をアメリカの人たちに知らせなければならない、あなたたちは、被曝者です、と伝えなければならないと思うようになった。

でなければ、アメリカの人たちは、広島・長崎の問題を、未来永劫、他人事としてしか見られないだろう。

一方、日本では、いまだに、「世界で唯一の被爆国」と言う言葉が使われている。

核兵器の問題は、いつまでも日本は落とされた側でアメリカは落とした側というスタンスは変わらない。

ここで考えなければならないことがある。

まず、日本政府と日本国民はイコールなのか、アメリカ政府とアメリカ国民はイコールなのか、ということだ。

特に核の問題を考える時、決して、イコールではない、と考えるべきだ。

その証明の一つが、アメリカ政府は、国民が被曝することを知りながら101個の原爆が投下したという事実だ。

国民の命を脅かす政府が、国民とイコールなはずなない。

我々は、「アメリカが」とか「日本が」という場合、それが何を意味するのか、明確に把握しておかなければ、話はうまく前に進まない。

いずれにせよ、アメリカは、世界にたくさんある被曝国の一つである。ということだ。

アメリカ人は、被曝者であり、被害者でもある。

そのことをアメリカ国民は自覚する必要がある。

物語は、エンドへと向かう。

ここでマグロ漁船の一航海を描いたフィルム映像が登場する。

この映像は、爆心地周辺で、マグロ船乗組員が被曝させられる様子を捉えた、世界で唯一の映像だ。

もし、放射性物質に色があったとすれば、どれほど恐ろしい映像になっただろうか。

無色透明のため、見た目には日常と変わらない様子が映し出されている。

ここまで明確な証拠映像があるにも関わらず、彼らの被曝は認められておらず、もちろん補償もされていない。

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