監督の読み解きと撮影エピソード 24

ぼくは、言いたい。

太平洋で行われた核実験は、1962年まで100回以上。

実験は、もちろんビキニ環礁だけではなく、クリスマス島やジョンストン島などでも行われた。

だから、「ビキニ事件」でもなく「第五福竜丸事件」でも「3.1」でもない。

放射能の被害は、放射性物質が生み出されたときから、半永久的に続く、だから、事件の矮小化には十分気をつけなければならない。

物語は、僕が、マグロ船乗組員の遺族を訪ね歩くシーンへと展開する。

2005年、フィルムに記録されている第七幸鵬丸乗組員たちを探し、聞き取りを行った際の映像だ。

どの家を訪ねても「だいぶ前に死んだ」「ガンだった」と遺族が答えるばかりだ。

もし生きていれば60代から70代、しかし、すでに死んでいた。

ある遺族から怒鳴りつけられた。「今頃来てどうする?弟は墓の下で眠っとる。聞きたかったらそこに行って聞いてこい」

僕には、あまりに重い言葉であり、あまりに悔しい言葉でもあった。

もっと早く、知っていたら。彼らが生きているうちに来られたかもしれない・・・。

微々たる力だが、彼らの受けた被害を少しでも多くの人に知らせることができたかもしれない、と。

マグロ船乗組員は、 核実験中だけで延べ20万人以上の乗組員が被曝した可能性がある。

だが、核実験終了とともに放射能汚染が消えたわけでもなく、何十年も汚染は続いた。

しかし、日本の政府は、何一つ、調査せず、補償もしない、放置したままになっている。

こんな理不尽なことがあるだろうか。

アメリカも日本も、政府と国民は、どうも一致しないようだ。

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