サイレント・フォールアウトヨーロッパチーム「よそものネット・フランス」のメンバー、飛幡祐規(たかはたゆうき)さんのフランス上映会リポートvol.4
6月13日(金)18時半から、イルドフランス地域(パリと近郊)反原発コーディネーション主催で「サイレント・フォールアウト」が上映されました。よそものネット・フランスはこのコーディネーションに参加しています。
同コーディネーションは今年に入ってから毎月上映会を行っていて、その第5回目に伊東英朗監督のドキュメンタリー映画「サイレント・フォールアウト」(2023年、73分)が選ばれました。
映画の内容に付いては、「サイレント・フォールアウト」ホームページからの抜粋を下記に紹介します。
「1951年からアメリカ国内で始まった大気圏内核実験は100回。核実験によって北米大陸全域が放射能汚染。汚染したミルクを飲んだ全米の子どもたちが被曝。立ち上がった女性たちの行動が、ケネディ大統領を動かし、ついに大気圏内核実験が中止された。アメリカ国内で行われた828回の地下核実験が、そのまま地上で行われていたら…北米大陸は死のエリアになっていたかもしれない。女性たちと歯の抜けた子どもたちが、放射能から北米大陸を救った奇跡の物語(事実)。」
会場はパリのレピュブリック広場からすぐの労働会館の別館、広場の反対側にある歴史的な本館に比べてモダンな設備があるので、映画上映に適しています。入口にはホールがあり、16時半から準備を開始してこのホールに置かれたテーブルに手作りのビュッフェ等を綺麗に並べました。


反原発関係の書籍や地方のイベント紹介など、インフォメーションデスクもありました。
18時半に開場し、上映会に来た人々は、まずこのホールで談笑しながらアペリティフを楽しみました。飲み物、食べ物と映画鑑賞費は無料ですが、テーブルには監督さんへのカンパ用の箱を置きました。
ホールと上映会場の間のスペースには、「被ばく者の絵」を展示しました。広島・長崎80年の今年、いくつかの催しで展示しようと、広島平和記念資料館と長崎原爆資料館が提供するデータから広島の絵20枚、長崎の絵5枚を選び、よそものネットが印刷し、フランス語で作ったキャプションと共に用意したものです。

19時すぎ、映画と「被ばく者の絵」についての説明の後、上映を行いました。

映画の後は、アンヌ・マリーさんがロシア(旧ソ連)とフランスが行った核実験について発表しました。フランスはアルジェリアの砂漠で17回(アルジェリア独立後も)、仏領ポリネシアのムルロワ環礁で193回、合計210回の核実験を行いました。しかし、2010年に核実験に関係した軍人などの賠償を定める法律ができるまで、核実験は全く安全で健康被害はないとされ、2021年まで実態は軍の機密として公開されませんでした。放射能による23の疾患のみを認めるこの法律には他にもたくさん問題があり、現地の住民は賠償や疾患の治療、健康管理をほとんど保障されていません。
核実験退役軍人被害者団体 (AVEN) 会長のジャン=リュック・サンスさんは、フランスで軍人被ばく者たちがどのように苦労して国が賠償金を払う法律を国会で可決させたか、アルジェリアやポリネシアの現地人の被害者にそれをほとんど(アルジェリアは全く)適用できていないため、法律の改正を求めている状況を語りました。

観客は約80人。反応はよく、アメリカ本土の汚染について知らなかった人もいて、被害者の悲惨な状況がわかり、感動的で素晴らしいドキュメンタリーだという感想などが聞かれました。この映画を見て、これまで否認されていた被害を認め、未来の世代のためにも行動しなくてはならないと感じた若者もいました。この映画は色々な所で上映できたらいいとの感想も多くありました。

また、国民議会の左派野党「服従しないフランスLFI」の議員2人が見に来ました。前から原子力の問題に関心を持ち反対の立場の議員で、認識をさらに深められたと喜んでいました。この日は、パリの日本文化会館で催された日本の被爆者2人と若者の講演の時間と重なってしまった(会場を早めに予約した時点ではプログラムに告知されていなかったため、調整不可能)のが残念でしたが、コーディネーションの月例上映会では最も多くの観客を集めました。22時に終了した後も、人々は会場の外で話し続けていました。
また、「汚染水の海洋放出反対」スタンディング写真も撮りました。
