監督の読み解きと撮影エピソード 11

第3章 乳歯

僕らは、セントルイスに向かう。

2章までで、全米の放射能汚染が、決定的なものであることを理解してもらえたとして、これを受け、第3章では、アメリカ史上最も重大で、最も知られていない史実を掘り起こすことにする。

キーワードは、「乳歯」と「女性」だ。

「乳歯」との出会いは、映画に登場するジョセフ・マンガーノの著書、『Radioactive Baby Teeth』だった。

彼が2001年、ワシントン大学の倉庫に眠っていた10万本を超える乳歯(1946~65年に出生した人たちで、セントルイスで生まれた人が80%、残りは50の州と45の国の人のもの)を手に入れたことから話は始まる。

核実験当時、アメリカの子どもたちの体内にストロンチウム90が蓄積していたこと、つまり被曝していたことを、乳歯が証明した、というものだった。

アメリカ大陸が放射能汚染され、アメリカ人が被曝していたことが、一般市民である女性たちが60年前に明らかにしていたことに驚いた。

そして、大統領が動き、アメリカ大陸の壊滅を救ったというアメリカ史上最も重大な歴史的事実を、現代のアメリカ人が誰も知らないことにも驚いた。

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