監督の読み解きと撮影エピソード 7

第2章 グラウンド ゼロ

爆心地に立ちたい。

ずっとそう思い続けてきた。

理由はわからないが、そうしなければならないと思っていた。

何かを確かめたい、ということだったのかもしれない。

 

爆心地(旧ネバダ核実験場)は、ラスベガスに住むジム・アンドロルが、案内してくれることになった。

彼は、核実験終了後、マーシャル諸島エニウェトク環礁で核実験の残骸を処理するクリーンナップ作戦に参加し、被曝した。

様々な病気を抱え、生活している。

僕らは、彼と出会ってすぐに、彼の優しさを知ることになる。

とんでもなく優しい。

こんなに優しい人が他にいるだろうか、と思うほどだった。

ラスベガス初日、ジムのインタビューを収録していた時のこと。

長時間のインタビューのため、時々、妻のベブから電話が入ることがあった。

何やら要件を話すと、ジムは、電話を切る前に「アイ・ラブ・ユー」と言う。

その後も、電話を着る前は必ず「アイ・ラブ・ユー」と言うので、気になって、その理由を聞いた。

するとジムは、「この電話が、最後の会話になるかもしれないからだよ」と答えてくれた。

実は、妻ベブも大きな病を抱えている。

二人にとって、日常的な時間と会話の一つ一つが、とても大切なのだ。

ジムにお願いしたことがあった。

60年前の資料に「観光客がキノコ雲を見物したチャールストンという山がある」という記事を見つけていた。

その山でキノコ雲を撮影していた新聞記者が「核実験を撮影していたところ、キノコ雲が風に流され、自分たちの方に向かって来たので、慌てて逃げた」と書き残している。

ジムは、「この場所なら知っている。明日、一緒に行こう」と言ってくれた。

翌日、チャールストン山を目指し、ジムの運転で砂漠地帯を走る。

およそ1時間で山に到着した。見晴らしが良いためトレッキングを楽しむ観光客がたくさんいる。

展望台からの眺めは素晴らしい。しかし、眼前に不気味に広がるのは、かつて核実験が928回も行われたエリアだ。

悪魔の住む場所を見下ろしている。

こんな汚い場所があるだろうか。

何枚かの看板に当時のことを記しているが、観光客は、半世紀以上前のことだと、何も気にしていない。

核実験場まで、わずか80キロ。この距離なら、核実験で生み出されたプルトニウム(半減期2万年以上)が地面に存在するだろう。

特に気化したプルトニウムは、地球上で最も危険な物質といわれている。

プルトニウムを含む砂埃を吸わないように、僕らは、ジムからもらった医療用のマスクをしていた。

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